闘争領域の拡大  ミシェル・ウエルベック 著

          2004年、角川書店 刊、

資本主義の進展に伴って、性の領域もまさに格差が拡大するといった思想のもとに、主人公がセックスの闘争の道に進んでいくといった話。

そんなにセックス、セックスと言わなくてもとふと思うが、翻訳者の野崎歓氏の解説によると、

”闘争領域の拡大とは何か。高度資本主義をささえるのは、個人の欲望を無際限に肯定し、煽り立てるメカニニズムである。そのメカニズムを行き渡らせることにより、現代社会はあらゆる領域で強者と弱者、勝者と敗者を生み、両者を隔ててやまない。経済的な面においてだけではない。セクシャリティにかかわる私的体験の領域においても、不均衡は増大する一方である。あらゆる快楽を漁り尽くす強者が存在する一方、性愛に関していかなる満足も得られないまま一人惨めさをかみしめる傷ついた者たちも存在する。”

 と言う論理になるらしい。
作者は、”素粒子”において、生物科学の発達により、婚姻制度と性交は分離したとかなんとかいった論理にいきつき、セックスにのめりこんでゆくのだが、これはフランスカソリックから激しく避難された様子である。