サムラー氏の惑星   ソール・ベロウ著

            1974年 刊、新潮社、

米国で、当時やけに評価が高く、各賞総嘗めになっていたので読んでみた。


ベロウ氏は、基本的に古典的形式に絶対の信頼をおいているらしく、アブァンギャルド的な形式の斬新さの作品群とは、ちょっと違っているようだ。


雰囲気的には、フローベールや、プルーストの持っている、欧州の気品ある作風で、彼がユダヤ人としての悩みとはまるで無関係かのような、上品で、知的な作風になっていた。


そうは言っても、内容はアメリカの独特の乾いた物資主義で満ちており、そこが非常にモダンな感じになっていた。


ストーリーらしきものは、あまりなく、取るに足らないような断片で構成されている。


アメリカで評価が高かったのは、ユダヤ人であるにもかかわらず、その上品さと、気品あふれる感じが、アメリカの保守主義的な人々、急進的な人々、その両方に拍手喝采された為と推測される。