1993年 集英社刊、
全編、ベットでの男女の会話だけから成っている小説であった。
最初、何が”いつわり”なのか解らなかったが、会話そのものが既にいつわりであるという事らしい。
訳者の宮本陽一氏の解説によると、ロス氏の作品は常に、事実と虚構のあいだの境界線を脅かし、「自伝」という形式が完結するといこと許さないといった呈を成しているとの事らしい。
そう言えば、ヘンリー・ミラー氏の小説も、読んでいてこれはただの「自伝」にすぎないのか
よく解らなくなった記憶がある。
事実か虚構かといった事は、やや古めかしい問題のように思われるが、ロス氏は「自己の探求」にこだわり続けた作家であるらしい。