ダイング・アニマル   フィリップ・ロス 著

              2005年 集英社 刊、

私という人称の語りと、所々に君はという人称の語りが混ざっていた。


日本で、60歳も過ぎた老人が、若い女性の肉体関係に陥り、マスターベーションまでする羽目に陥るというお話は、笑い話になるか、冗談に受け止められるような気がするが、アメリカ人ロス氏の手にかかると、ごく普通の事であり、シリアスな問題であるといった印象を強く受けた。


ロス氏の性の哲学として述べられた箇所、
”セックスによってのみ、きみは人生において嫌悪してきたものすべて、人生において挫折してきたものすべてに対して、純粋にー一時的にではあってもー復讐できるのだ。そのときだけ、きみは楽々と生き、楽々と自分自身でいられる。セックスが堕落なのではない、堕落はセックス以外である。セックスは闘争ではないし、浅薄な娯楽でもない。セックスは死への復讐でもある。死を忘れるなかれ。絶対に忘れるなかれ。そう、セックスも力においては限界がある。限界がどのあたりかも私はちゃんとわかっている。でも、これ以上強力な力などあるだろうか?”

なお、この小説は映画化されており、”エレジー”というタイトルで、ペネロペクルスが、美しい乳房を見せている。