アメリカ文学史のキーワード 巽考之 著
やはり、アメリカ文学の主流を考えると、あくまで、白人でアングロサクソンでプロテスタント、すなわち通称WASPを中心とする家父長制下の歴史観になってしまうらしい。
著者は、1980年代を経て勃興した”多文化主義”や”ポスト植民地主義”の波を受けて、アメリカ文学史は一気に複雑化したと述べておられる。
”新しいアメリカニズム”はいまや、”アメリカ以外の諸共同体”によって、ヨーロッパ的植民地主義の対象であった被植民地たちをもふくむ”多様な共同体”によって根本的に創り直されようとしているのではないかと思考しておれる。
僕個人としては、モダニズム以降のマジック的な小説実験のあと、小説はその後どうなってしまったのだろうという疑問があったのだが、60年代の実験的反リアリズム小説への反動として、ミニマリズム風にして軽妙かつ日常的な描写の小説への揺り返しが起こったらしい。