トマス ピンチョン 重力の虹
形式的には、”映画的なフラッシュ・バックを応用した全編73個の断続的なシーン、エピソード、チャプター(章)を自在につなぎ合わせて描かれた形になっているとのこと。
テクストのたゆまぬ断片化・再統合から繰りなされるテクストの魅力、おびただしい物語断片を集積したあげくのはてに一気に炸裂し、散乱していくテクスト。
全編”コラージュ”から成り立っていると言えるようだが、内容は、予想に反して、気味悪く、暗いので驚いた。文章は、全編客観描写で成されていた。ジョン・バース氏の作品には、それとなくユーモアのようなものが感じられて、それが救いになるが、ピンチョン氏の場合は、ユーモアを感じるには、少し気味悪すぎるように思われた。これは、”闇の力”エントロピーと呼ばれているらしい。ユーモアを感じるには、描写が容赦無さすぎる。
ピンチョン氏の作品には、兵隊と麻薬といったものが、しばしば登場するらしい。
主人公は、ロケットの秘密を調査する、スパイといった風で、映画007のパロディになっているのかと思われたが、痛快な活劇とは全く違っていて、どこまでもグロテスクな話が延々と続いている。
二段組で800ページぐらい延々と続く物語なので、途中鬱病のようになってしまった。もう少し、コンパクトにしてもらいたかった。