キマイラ ジョン・バース
1980年の翻訳となっていた。
バース氏の作品は、どれも、何を馬鹿な事を言い出すのだといった衝撃をうけるが、意味や脈絡を踏み外しそうなギリギリの一点で、踏みとどまっているような驚きがある。どうして、こんなメチャクチャな転回で、意味が通じているのか、不思議に思われる。
口承的な文体であるという事は、伝統的、叙事詩的、時間系列にのっとった、リアリズムの描写の文学に反逆しているという事になる。
作者は、自らの書き方を”ほかの語り方でほかのストーリーを語らないでぼくが語るようにストーリーを語る”といっているくらいだから、その語り口は相当変わっている。
”寓話”という言葉があるが、バースの小説は、どこか大人の童話のような雰囲気になってくるから不思議だ。