ヘンリー・ミラー論

osamuoh2007-03-04

大久保康雄氏の「ヘンリー・ミラー 現代作家論」という研究書。

ミラーの作品などは、クズばかりだ!と嫌いな人も多いようだが、たしかに、性交の場面ばかりで、まるで、”浮浪者のオジサン”に、”自分の女性千人切りなどの自慢話”を聞かされてれているようで、いくら好色な僕でも、やはり少し腹が立つ。


本書ではその点について一応このように述べられていた。

”卑猥は直接的だが、春本は暗示的だという。春本は要するに催淫剤的、卑猥のほうは不快千万なものだと言えよう。春本はロマンティックであり、セックスをありのままよりも魅惑的に見せようとするのに反して、卑猥はセックスを胸糞の悪いもの、あるいはばかげたものにしてみせる。”
との事であった。


ミラー氏は、その手法が非常に斬新で、本書では”彼は街頭のおしゃべり屋”であるとのべてあった。自由連想、内的独白がかなり、くっきりと使用されており、ただの”おしゃべり”にしても、それが、200ページ、300ページも続けられてあると、やはり、かなり迫力がある。


しかし、ミラー氏の姿勢は、アウトロー、ならず者、反逆者、呪われた詩人である事で有名なようだが、やはり、そのような”社会の落ちこぼれ”の人生は、やはりどこか寂しく、恐ろしい。