ミステリアスセッティング
安部和重氏の最新作”ミステリアスセッティング”という著作。
しかし、読み終わってこうまで後味の悪い小説もめずらしい。
安部氏は、外見は、どうみても、スマートなシティボーイ風な風貌で、ウンザリするくらい、派手で、都会風の表紙のデザインに、かなり強引にしてしまうので有名だが、こうまで、表紙と内容の違う話もめずらしい。
都会の最先端の若者の、カッコ良い表面と裏腹に、その裏のかなり、トゲトゲした、いじめ、かつあげ、などの実態を、かなり、しつこく描写しておられる。
よううするに、主人公の少女は、どこまでいっても、唯の、”金づる”としか思われていないのだ。
本人は友達と思っていても、相手は、唯の便利な、キャシュカードとしか思っていないという、あまりにも、簡単な事実。
分かっていても、相手もかなり必死であるから、いじめが止る気配もない。
ショックな現実観であった。
昔は、ニヒリズムや、アナキストなど、かなり元気な、免疫になる言葉などがあったが、現代のネットワーク化した、デジタル社会では、そのような免疫になるような、元気な言葉や、思想などが、あるようで無いので、よけい不安がつのる。
しかし、友達、かつあげ、集団リンチ、パシリ、雑用係など、若者の文化にも、完全な裏のオキテが存在するのだなと、うんざりしながらも、感心してしまった。
まるで、”若者裏社会ヤクザ文化”ですね。