エコー・メイカー   リチャード・パワーズ著

             2012年 新潮社 刊、

作者は、物理学専攻で、コンピューターのプログラマーとして働いていた人物であるようで、まさに現代の申し子、今どきの人間だと思われるが、文章が、どうしても科学的で、それはそれで美しいのだが、やはり文学関係の方達のような、文章の味わいが感じられず、少し寂しい。コンピューターの登場以来、確実にそれまでの文学的文体というのとは、完全に断絶されているようで、なにか恐ろしい。そこが良いと言う人もいると思われるので、しょうがないが、ある不安を今更にになって感じる。


作者のポートレイトが、いかにも科学的にクリーンな好青年という印象なのので、やはり、ちょっとした反発を感じてしまう。文学はそんなに綺麗事ばかりでもなかろうに、といった、あるひがみめいた不満が残る。


それと、作者は、脳のメカニズムという事にやたらこだわっているようだ。


エコー・メイカーとは、”こだま”を作る人と言う訳になるが、何が”こだま”なのかちょっと解らなかった。