密林の語り部   マリオ・バルガス=リョサ 著、

             1994年 新潮社 刊、

森や森林の静けさや、癒やし感なら解るが、アマゾンの密林となると大変困る。精神の癒やしどころか、命の危険を感じてしまう。


本書は、ペルーの都会の研究所と、アマゾンの密林に住むことにした男の描写が並行して語られる。


密林での語りは、ちょっと意味不明な部分も多くなかなか理解しがたい。レビィ・ストロースの”悲しき熱帯”という研究書が有名だが、ただ”野生の復権”として結論づけるには難しすぎる。


フランス人のクレジオ氏も、この古代の文化の魂の復権を考えておられるらしく、メキシコに住居を持ち、現地のインディオの血をひく女性と結婚までなさったようだ。僕の理想としては、リゾート化した観光地として、その雰囲気を楽しむ姿をイメージするのがやっとで、原住民と同化しようとするまでは、とても考えが及ばない。


あと、南米の都心からちょっと離れた地域は、なんか日本のうら寂れた商店街をみるようで、物悲しくも悩ましい。こういった郊外の辺境感覚は、鬱病を引き押してしまいそうで怖い。