タナトス 村上 龍 著、
2001年、集英社 刊、
レイコと言う女性の独白が主な構成。
この頃は、まだ、プルーストやジョイスの人気もあったようで、村上氏は現代では、内的独白はこう書くのだ!と言わんばかりの凄い描写力であった。
これで、一応、エクスタシー、メランコリア、タナトス、と三部作になっているようであった。
村上氏の、デビュー時のキャッチフレーズとして、”ロック”、と”ドラック”、”セックス”、の作家、というのがあり、良識ある市民がページを開けば、眉をひそめるような過激な描写のオンパレードで、当にこれぞ悪書と言わんばかりの書籍なのだが、何故か龍氏は文学的評価が高く、普通に図書館に置いてあるのも、考えてみると凄いことだ。
一応、古典の世界では、”ピカレスクロマン”というものがあり、騎士道物語の氾濫の後の、退廃と悪を描いた小説がヨーロッパに広まった事があるらしいのだが、”社会への批判”と”社会風刺”という意味合いがあったらしい。こんな酷いセックスを描いて、ほんとに社会批判になるのかと、ちょっと不安になるが、龍氏の作品は、なんとかどうにか読み終えて、何か綺麗だな、と言う印象が残るのが不思議だ。
しかし、ピカレスクロマンといっても、まともなアカデミズムで、ちゃんと研究されているかというと、甚だ心もとなく、そのような研究ジャンルは存在しないかのような雰囲気だ。
速水健朗氏は、龍氏は、いつも時代の最先端の”社会”を描き、”社会に復讐”しているのですと、チラッと説明なさっておられた。
一般的に、男性の読者はほとんどグッタリしているのだが、女性に龍氏と言うと、キャー、カッコ良いという反応が帰ってくる。しかし、男性読者ではやはりダメなのかな?・・・・・・・・、