ヒューマン・ステイン  フィリップ・ロス 著

              2004年 刊、集英社


ステインという言葉は、”けがれ”と訳すらしい。


本書で少し気になったのが、フランス人で、エコールノルマンを卒業し、クリスティバを読み、ソレルスの小説を愛し、ゴダールの映画を語りたがるような、典型的なエリートタイプが、ここアメリカでは、多少”鼻つまみ”者的な雰囲気で受け止められているというような、微妙な感覚だった。アメリカの最先端の学術の世界では、重要問題が少し違ってくると言う点が興味深かった。なにしろ、多人種の坩堝の大国文明のアメリカだ。無理も無いと思われる。


文体が、何か非常に男性的で、バイオレンスの事などあまり書かれていないのに、まるでアクション映画を観終わったような不思議な感覚に陥る。



アメリカという国では、自由とひきかえに、男性は常に強くあらねばならないと感じた。文学でも男性的強靭さがかなり浮き彫りにされるように感じられた。