蜘蛛女のキス   マヌエル・プイグ 著


1983年頃の翻訳であるから、もう随分昔の著作だ。


全編、”会話”だけで構成されており、”会話小説”と呼ばれたらしい。



そんな、シナリオのようなものが、小説として面白いのかと思われるが、この会話がなかなか洒落ていて面白い。本編では、会話以外のト書きのようなものもいっさい削除されていて、それでお話として読めるのが不思議だ。



詩的断片のような断片と、報告書があるが、本作では、ほんの数ページに留まっていた。



小説から会話だけを取り出す本著作は、会話だけのほうが、あるシーンを連想させるイメージの力学が、よけいに刺激されて、かえって想像力が高まるのが不思議だった。


哲学的には、人間のコミュニュケーションの重要さと、現代人のコミュニュケーションの不毛さを表していると言われたらしい。