ブエノスアイレス事件  マヌエル・プイグ 著 鼓 直 訳


1973年頃、ベストセラーになった作品らしい。


電話による会話の断片、説明的な脚注、新聞記事、架空インタビュー、密告電話の速記、警察の調書、妄想時の意識の流れ、履歴書、検死解剖報告書、通俗医学書からの抜粋、第三者の目撃談、等々の多岐多様な断片から成っていた。


小説の中にも、ラウシェンバーグなどについての記述もあり、本当にコラージュだけからなる、構成主義的な小説を完成してしまったらしい。


内容は、過度にわたるオナニー描写など、ほとんどポルノ小説であった。性と愛の不毛が表現されていると言われたらしい。


映画界から小説に転進した作者らしく、映画のシナリオの断片が特権的な位置に据えられてた。


全体を読み通すと、自然にそれぞれの断片が一致するようになっており、まるでサスペンス映画を観ているような快感があった。