ラテンアメリカの小説の世界    鼓 直 著

もうかなり昔の時代に有名になった事であるので、何を今更感があるが、”マジックリアリズム”という事で、何度も引き合いに出されるの気になってしようがなかった。



”太古の土俗性”と”ヨーロッパの最先端の芸術の流行との融合”が、特徴になっているらしいのだが、本当にここまで土着性が強調されているとは思わなかった。”グロテスクなリアリティ”として、機械的に理解しようとしても、やはりこの”土着性にはかなり抵抗感”があり、本当に”気持ち悪い”ので驚いた。しかも、確かに海は綺麗で、自然豊かかと思えば、政治は常に独裁制の危機にあり、しかも、国民はそれを望んでいるらしいとか、頭をかかえ込むような問題が山済みであり、ショックを受けた。ほとんど、文学をやっている場合では無いといったような状態であり、亡命を余儀なくされた人が多いらしい。



都会で育った人には、このような土俗性はどのように感じられるのだろうか。田舎育ちの僕などには、何か自己の生い立ちの事を言われているようで、心穏やかにはおられない気がした。



当時、これらの作品群を訳する人、研究できる人がいないので大変であったらしい。ほぼ鼓氏一人ぐらしか訳者はいなかったらしい。